FC2ブログ

吸血の群れ

ちゃんと「アニマル」であるということ
吸血の群れ

◆◆◆
原題:FROGS
製作年:1972年 アメリカ
監督:ジョージ・マッコーワン
製作:ジョージ・エドワーズ/ピーター・トーマス
製作総指揮:ノーマン・T・ハーマン
脚本:ロバート・ハッチソン/ロバート・ブリーズ
撮影:マリオ・トッシ
メイクアップ:トム・バーマン
編集:フレッド・R・フェィシャンズ・Jr
出演:レイ・ミランド/サム・エリオット/アダム・ロアーク/ジョーン・ヴァン・アーク/ジュディ・ペイス/リン・ボーデン/メエ・マーサー/デヴィッド・ギリアム


◆STORY
フリーカメラマンのスミスは、科学雑誌の依頼でフロリダの自然を撮影するためにとある島を訪れていた。

彼は撮影の最中、島に別荘を所有するクロケット家の人々と知り合い、一族が集うパーティに招待される。

7月生まれの多いクロケット一族は、毎年アメリカ独立記念日に合わせ、誕生日をこの島の別荘で祝うのだという。

「しかし最近、島でカエルが異常発生して困っているんだ」

一族の長であるジェイソン・クロケットは、自然科学の専門家であるスミスに、島の環境調査を依頼する。

ジェイソンの依頼を引き受けたスミス。

しかし、調査を開始したスミスは、森の中で男性の死体を発見。

その死体には無数のヘビやカエルが群がっていた・・・・・。


◆REVIEW

アニマル・パニックと呼ばれるジャンル映画は、1970年代~80年代にかけて世界中で量産された。


ブームの火付け役となったのは、スティーヴン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』

Jaws.jpg


1975年に公開された『ジョーズ』の世界的ヒット後、ありとあらゆる動物たちが、映画の中で人間たちを襲い始めた。

1976年の『グリズリー』

1977年の『オルカ』

1978年の『ピラニア』

1980年の『アリゲーター』


その他にも数々のアニマル・パニック映画が、この時期に誕生している。







「アニマル・パニック映画」にとって大切な要素。



それは文字通り、「アニマル」「パニック」である。



そして特に重要なのは、この「アニマル」という存在。

作品の中に登場し、人々を「パニック」に陥れるこの「アニマル」が、人間にとってちゃんと「アニマル」であることが、最も重要なのだ。




ちゃんと「アニマル」である、とはどういうことか。



たとえば、「アニマル」が何かの原因で超巨大化して人間を襲い始めた、という設定の作品。

そこで現実にはあり得ないほど超巨大化した「アニマル」は、もはや「アニマル」には見えない。

それは「モンスター」だ。

その作品は、もう「アニマル・パニック」ではなく「モンスター・パニック」になってしまうのである。
モスキート

ここで問題となるのは、超巨大化が非現実的であるということではない。

「アニマル」が、ちゃんと「アニマル」になっていない(つまり「モンスター」になっている)ということが問題なのだ。
(ちなみに、私はモンスター映画も大好物なので、どちらでもいいのだが)




一見何の変哲もない「アニマル」が、ある日突然襲い掛かってくる。

その「アニマル」が平凡であればあるほど、私たちの日常と地続きな感じが生まれ、恐怖も倍増する。


洋泉社より出版された『悪趣味ビデオ聖書』における中原昌也氏の表現を借りるならば、



夜、街角でばったり「猫会議」を見てしまったときに覚える不安感



まさに、これこそがアニマル・パニック映画の肝なのだ。





今回ご紹介する作品は、1972年のアメリカ映画『吸血の群れ』


ばったり「ネコ会議」に遭遇してしまったときに感じるあの不安感を、ひたすら凝縮したような作品だ。

つまり、アニマル・パニック映画の真髄が、ここにある。
IMG_20150802_0001-thumb-538xauto-8319.jpg

しかも、この作品はアニマル・パニック映画のブームを巻き起こした『ジョーズ』より以前に製作されている。


日本での公開が『ジョーズ』と同じ1975年であったため、ブームに便乗して作られた志の低い映画のように見られがちだが、決してそんなことはない。


『吸血の群れ』は、『ジョーズ』のフォロワーではない正統な「アニマル・パニック映画」なのだ。



この作品で人間を襲う「アニマル」は、カエルをはじめとして、トカゲ、ヘビ、ヒル、クモ、ワニ、カメなど多種にわたるが、それらはどれも単体では普通の「アニマル」だ。


というより、何の加工もされていない完全に本物の「アニマル」なのである。
吸血の群れ1



それらがある日突然、人間を襲い始める。


毒を持っているヘビやクモは別にしても、カエルやトカゲに対して普段から身の危険を感じているという人は少ないだろう。


しかし、この作品の中ではその価値観が崩壊する。


映画の終盤では、にじり寄ってくるカメにすら恐怖の叫びを上げてしまうのだ。
吸血の群れ18

5kJ5ToI238Vsg12QVznn1570195355-1570195400.gif








物語の舞台は、森と湿地帯に囲まれたフロリダの島にある別荘地。


フリーカメラマンのスミスは、科学雑誌の依頼でこの場所を訪れていた。
吸血の群れ4

自前のカヌーで川を下り、森の写真を撮り続けるスミス。

彼のカメラは、人間の出すゴミや排水で汚染されたフロリダの自然を捉えていた。
吸血の群れ5



やがて、海まで下ってきたスミスのカヌー。


そこに突然、一台のモーターボートが猛スピードで突っ込んでくる。


スミスのカヌーは、そのボートの勢いに押されて転覆。


「しまった!やっちゃった!!」


ボートに乗っていた男女二人は叫び声を上げた。




スミスは、戻ってきたボートによってすぐに救助される。

「悪気はなかったんだ。許してくれ。」

ボートに乗っていたのはクリントカレン

彼らはクロケット家の兄妹だった。
吸血の群れ6



クロケット家とは、この島に別荘を所有している大富豪。

彼らの一族は、7月4日のアメリカ独立記念日を祝うため、毎年この時期になると島の別荘に集まるのだそうだ。

なんでも、一族の長であるジェイソン・クロケットは7月4日が誕生日であり、また一族の中には7月生まれが多いため、この日を皆で祝うことが習慣になったのだという。


スミスは、カヌーを転覆させたお詫びとして、クロケット家の別荘に招待されることとなった。






「おじい様、こちらはピケット・スミスさん。」

別荘に着いたスミスは、カレンの紹介でジェイソン・クロケットと面会する。
吸血の群れ8


しかし、ジェイソンは歓迎ムードではなかった。
吸血の群れ7

「君は、朝からこの辺をウロウロして写真を撮っているようだね。」

「はい。」

「ここは私有地だ。君がやっていることは違法行為だよ。
いったい、君は何者なんだ。」

「私はフリーのカメラマンです。生態学の専門雑誌の依頼で、ここへ取材にきました。」

「生態学・・・・。」

「おじい様、詳しいお話は着替えの後にしてくださいな。彼はびしょ濡れなのよ。」





カレンに連れられて屋敷へと入ると、電話機が目に入った。

「電話を借りていいかな。会社にかけたいんだ。」

「ええ、どうぞ。」

しかし、電話は不通だった。

「おかしいわね。朝は通じていたのに。」
吸血の群れ11



電話をあきらめ、着替えを済ませたスミスは、屋敷の庭で始まったクロケット一族の食事会に参加した。


「子供たちの姿が見えないが、どこにいったんだ?」

「プールで遊んでいたから、もうすぐ来るはずよ」


すると、向こうから二人の子供が走ってきた。

クリントと妻のジェニーの間に生まれた子供たちである。
吸血の群れ2



息子のジェイは、手に何かを持っている。

「見て見て!すごく大きいでしょ!!」

それは大きなカエルだった。
吸血の群れ10

「そんなもの、触っちゃダメだ!!」

大人たちに叱られ、ジェイのカエルは取り上げられた。





「最近、カエルが異常繁殖して困っているんだ。」

グラスを傾けながら、ジェイソンが話始める。


「スミス君、君は生物学に詳しいようだね。」

「はい、専門です。」


「君もここでカエルの群れを見ただろう。この数は異常だと思わんか?」

「ええ、こんなに繁殖しているのは珍しいですね。」


「これだけ科学が発達しているのに、たかがカエルを退治することすらできない。
おかしなものだよ。」

「私にできることがあれば、お手伝いします。」


スミスの言葉に気をよくしたジェイソンは、軽く微笑んだ。


「では、君に一つ頼みがある。」
吸血の群れ9



ジェイソンの「頼み」とは、次のようなものだった。


生物学の知識があるスミスの目を通して、この島の状況を観察し、その感想を聞かせてほしい。

しかし、島の全てを見て回るのは不可能だ。

そこで、まずは北の入り江に向かってほしい。

そこには、ジェイソンが雇っているグローバーという男がいるはずだ。

彼はカエル駆除の毒物を散布するために北の入り江へ向かったまま、まだ帰ってこない。

だから、島の観察ついでに彼を連れ戻してほしい。



ジェイソンの依頼を受けたスミスは、早速北の入り江へと出発する。



スミスが到着した時、北の入り江は様々な生き物の死骸で溢れていた。

死骸の側には、使用人のグローバーが捨てたであろう毒物の空き缶が放置してある。
吸血の群れ14


スミスは、森の中に点々と散らばる生き物の死骸を辿っていく。



そして、その先で彼を待っていたものは、無造作に乗り捨てられたジープだった。

その傍らには、横たわる男性の姿が見える。



草木をかき分け、男性の側へと近づいたスミスは顔をしかめた。



それは、無数のヘビやカエルが群がるグローバーの死体であった。


※これ以降はネタバレを含みますのでご注意ください

吸血の群れ13

吸血の群れ12


別荘に戻ったスミスは、グローバーが死亡していたことをジェイソンに伝える。

「スミス君、このことは他の連中には黙っていてもらえないか。
皆に不安な思いをさせたくない。」


グローバーの死につして、ジェイソンに口止めされたスミス。

彼はジェイソンの意向に従い、この件を誰にも口外しなかった。



そして、クロケット一族は何事もなかったかのように独立記念日を迎える。



しかし、そんな彼らに音もなく忍び寄る血に飢えた「吸血の群れ」

クロケット一族は、一人また一人と「群れ」の餌食になっていく。
吸血の群れ28

ちなみに、邦題によって「吸血の群れ」と名付けられた「アニマル」たちの中で、本当に吸血するのはヒルだけである。






それでは、ここで「吸血の群れ」のメンバーを簡単に紹介しておこう。




吸血の群れ15 
ヘビ
爬虫綱有鱗目ヘビ亜目(Serpentes)に分類される爬虫類。
人間たちを全身全霊で威嚇する。
威嚇された人間たちは、あわてふためき理性を失う。
理性を失った人間たちは、森の中に迷い込んだり、転んで沼に落ちたりする。
毒を持つ種類は殺傷能力あり。




吸血の群れ21
クモ
節足動物門鋏角亜門クモガタ綱クモ目(Araneae)に属する動物。
自分の脚を猟銃で撃って動けなくなった人間を襲う。
脚を負傷して動けない人間を、糸でグルグル巻きにしてさらに動けなくする。
毒を持つ種類は殺傷能力あり。




吸血の群れ23
ヒル
環形動物門ヒル綱(学名: Hirudinea)に属する生物。
ヘビの威嚇によってあわてふためき理性を失った人間が、沼地で転んだところを襲う。
殺傷能力はないが、人間に対して大きな心理的ダメージを与える。
「吸血の群れ」における吸血を担当する重要メンバー。




吸血の群れ22
トカゲ
有鱗目トカゲ亜目に分類される爬虫類。
ヘビのように毒を持っているわけではないので、殺傷能力はない。
そこで彼らは、人間が殺虫用に使用している毒物を利用して人間を攻撃する。
殺虫用の毒物は、温室の棚の上に並べてある。
トカゲたちは、人間が温室に花摘みに来た瞬間を見計らって、棚の毒物を落とすのだ。




吸血の群れ26
ワニ
ワニ目(ワニもく、学名:ordo Crocodilia) に属する、肉食性で水中生活に適応した爬虫類。
巨大な口に並んだ鋭い牙。
毒などは持っていないが、その身体自体に殺傷能力あり。
人間との泥レスを得意とする。




吸血の群れ25
カメ
カメ目(亀目、学名:Testudines、英語名:Testudines)に分類される爬虫類。
「吸血の群れ」における陰の実力者。
登場頻度が最も少ないにもかかわらず、その存在感は圧倒的。
殺傷能力については不明。




吸血の群れ24
カエル
脊椎動物亜門・両生綱・無尾目(カエル目)に分類される動物。
「吸血の群れ」メンバーの中心的な存在。
とにかく数が多い。
殺傷能力はないが、その圧倒的な数の多さにより人間をショック死させることもある。





以上、名前を挙げた「アニマル」たちは、「吸血の群れ」として力を合わせ、人間たちを次々と血祭にあげていく。


その圧倒的な力の差に、人間たちはなすすべもない。




人間たちの中で唯一互角の戦いを繰り広げたのは、ワニに対して泥レスを挑んだスチュアートぐらいである。
吸血の群れ29


スチュアートは自ら泥沼の中に突っ込むと、ワニに掴みかかりレスリングを開始。

長い戦いの末、最終的にスチュアートは命を落としてしまうのだが、途中までは明らかに彼のほうが優位に戦いを進めていた。

彼は丸腰でワニに戦いを挑み、その体一つで互角の戦いを見せたのだ。



しかし、なぜだろう。

「吸血の群れ」メンバーの中でも最も殺傷能力が高いと思われるワニが、なぜスチュアートとの戦いに苦戦を強いられたのだろうか。



ここで注目したいのが、ワニの口である。

ワニが持つ殺傷能力とは、その巨大な口による噛みつき攻撃だ。

口以外には攻撃する術を持っていない。

そんなワニが、もしその口をふさがれたとしたら、いったいどうなるだろう。

実は、スチュアートとの泥レスの最中、ワニの口は謎の黒いバンドによって縛られていたのだ。

CfMyqwPbNPeXwpWg7xkV1570195516-1570195532.gif

スチュアートが戦いの最中にワニの口をふさいだのだろうか。

それとも、ワニが人間に対するハンディキャップとして、自らその口をふさいだのだろうか。


理由はともかく、この黒いバンドのおかげで、スチュアートとワニは互角の戦いを繰り広げることができたのである。


しかし、そんなスチュアートも最終的にはワニの餌食となり、沼地は彼の血で赤く染まった。





「吸血の群れ」の攻撃により、次々と命を落としていく人間たち。

なぜ、彼らは命を狙われるのだろうか。

作品の中で、その理由が明かされることはない。

冒頭の環境破壊シーンから推測するならば、これは大自然からの人間に対する警告なのだろう。


人間が、心の奥底で「アニマル」を恐れる理由。

それは、「アニマル」であることを辞めた人間の、自然に対する罪悪感から来るのかもしれない。
吸血の群れ27

吸血の群れ31





別荘に集った人間たちの中で、最後に生き残ったのは5人だった。

スミスとカレン。

クリントの子供たち二人。

そして、クロケット一族の長であるジェイソン。
吸血の群れ30



スミスたちは、今すぐ島から脱出しようと提案する。

しかし、ジェイソンはそれを拒否。

「何があっても、ここで誕生日を祝うのだ!
出て行く奴は、もうクロケット家の一員ではない!!」


自分の子供や孫が次々と死んでいるのに、ジェイソンは自分の誕生日パーティーを祝うことに執着し続ける。


いくら心優しい孫娘カレンでも、そんなワガママには付き合っていられない。


こうして、皆はジェイソンを一人残し別荘を後にした。



「誕生日を一人で祝えっていうのか!クソったれ!!」



誰もいなくなった別荘で、ジェイソンは持っていたグラスを床に投げつけた。
吸血の群れ35





この超ド級のワガママ老人を演じたのは、『失われた週末』でアカデミー賞主演男優賞に輝いた名優レイ・ミランド


彼は『吸血の群れ』と同年に製作された『Mr.オセロマン/2つの顔を持つ男』においても、まったく同じようなワガママ老人のキャラクターを演じている。
The-Thing-with-Two-Heads-poster-1.jpg


とにかくワガママが似合う顔なのだ。




そんなレイ・ミランドが演じるジェイソン・クロケットは、まるで自分のワガママを償うかのように、最後は一人別荘に取り残され、大量のカエルたちに襲われる。
吸血の群れ32

吸血の群れ34

吸血の群れ33

しかし、いくら「襲われる」と言っても、相手はカエルである。

カエルたちは、直接ジェイソンに危害を加えることはない。

ただ別荘に侵入し、ジェイソンを取り囲み、ぴょんぴょんと飛び回るだけである。



ジェイソンは何の殺傷能力もないそのカエルの群れに怯え、一人でパニックを起こし、自ら倒れてしまうのだ。







夜、街角でばったり「猫会議」を見てしまったときに覚える不安感




その不安感は、やがて爆発し「パニック」となる。


まさに「アニマル・パニック」である。




この作品に登場するカエルたちは、ポスターアートのように人間を食べたりはしない。


ただ群れをなし、ガラス玉のような目でこちらを見つめているだけなのだ。



夜の街角で「ネコ会議」を開くネコたちと同じように。





しかし、これこそがまさにアニマル・パニック映画の真髄なのだ。


つまり、彼らは「モンスター」ではなく、ちゃんと「アニマル」なのである。

吸血の群れ3





【関連記事】 ぜひ覗いてみてください!
◆アニマル・ミステリーホラー
こちら⇒『リンク』



◆ゲテモノ映画の極北
こちら⇒『ミミズ・バーガー』





こちら⇒ホームに戻る




クリックして頂けると嬉しいです!!
↓↓↓↓↓


にほんブログ村






スポンサーサイト



プロフィール

シーモア

Author:シーモア
愛すべきB級映画やトラッシュムービー(ゴミ映画)を、できるかぎりマジメに紹介するブログです。

20世紀の映画に絞ってご紹介します。

最新コメント

カレンダー

11 | 2019/12 | 01
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

カウンター

検索フォーム

QRコード

QR